コダモンです。
ドイツの大学を卒業した後、日本の一部上場企業に就職しました。
中途採用で入社したその企業で同期となった同僚は、ほとんどが新卒。
この時に同期となったおよそ50名の新卒たちは、皆とても素直で明るい子たちでした。
イキイキしてた
しかし…。
活気と希望に満ち溢れていた彼ら/彼女らは、後の社会人生活でどんどん消耗していったのです。
そして、その原因は日本の『年功序列』から来ています。
『年功序列』が新入社員を潰す?
そもそも、『年功序列』って何なのでしょう?
年功序列(ねんこうじょれつ)とは、官公庁や企業などにおいて勤続年数、年齢などに応じて役職や賃金を上昇させる人事制度・慣習のシステム。(中略) 日本の年功序列制度は戦後になって出来上がったシステムである。
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』,年功序列,03.2020)
年功序列は、日本の特徴的な雇用制度。
戦後から変わらない圧倒的に古い制度です。
「社歴が長いから偉い」「年上だから偉い」そのように勘違いする人が職場にいるのは、この制度のおかげ。
ドイツハーフも、4年半で会社を辞めるまで年功序列に悩まされました。
そしてそれは、当時の新入社員も同じ。
配属後に久しぶりに同期に再会したら、みんなどことなく元気が無かったのです。明らかに『疲れ』がにじみ出ている。
入社時は元気だったのに
入社たった数ヶ月で、若者達はみんな消耗しきっていた。
慣れない業務だけでも一苦労なのに、職場の人間関係もあり、先輩社員からは叱咤激励される毎日。20代そこそこの同期達は、仕事よりも『社内のこと』で苦労していました。
そして、その原因が年功序列。
日本の雇用システムは、長期雇用・年功賃金といった日本特有の雇用慣行で雇用の安定と人材育成を重視してきました。しかしそれは、安定成長をもたらす反面「勤続年数が少ないと意見しづらい」「実力のある若手が認められない」などの弊害があります。
長く勤めた人に重きを置く、年功序列の制度。そのせいで人間関係の癒着も発生し、職場では『一番下っ端』の新入社員に多くのしわ寄せがいきます。
「新入りは当分『下積み』の期間だ!」
「上司より先に帰宅するなんてありえない!」
そのような意味不明な発言を、日本の職場でよく耳にします。
アホくさ
まさに年功序列の賜物。若者からすればいい迷惑でしかない。
新入社員は年功序列の最下位に位置します。それを利用して、雑用をさせたり裁量の低い仕事だけを任せる職場は、たくさん存在する。
でも、このような古い組織の在り方は、今の若者には受け入れられないのです。
新しい世代の台頭と価値観の多様化
現代の若者は、いわゆる団塊世代の50代の人などと比べると、明らかに別の思考回路を持ち合わせています。
世代間のジェネレーションギャップは、これまで幾度となく繰り返されてきた事です。
しかし……。
現在は人工知能 (AI) の台頭とIT技術の進歩により、オフィス業務はすさまじい速さで効率化されています。
ボクもおっさん?
日本とドイツで実際に社会人をしてみたのですが、大手企業でさえも、急速な時代の流れと市場の変化についていけずに戦略を見誤ることがあります
業界や職種を問わず、AIを導入する企業が増えている。スマホやPCで、いつでもどこでも仕事ができてしまう世の中。
そして、今の若い世代にとってはそれが当たり前なのです。
そのような新しい世代が、『オッサン世代』とうまく嚙み合うはずがない。
「ハンコの押し方がなってない!」
「目上に対する礼儀がなってない!」
仕事の効率などは完全に無視で働く年配社員。
これも年功序列のせいですが、こんなものは今の若者にとってはストレスでしかありません。
目の上のタンコブ
仕事を取り巻く社会と技術の進歩はどんどん進んでいるのに、職場の人間の思考は停止したまま。
日本の会社も、大昔から変わらない年功序列のまま。
ハッキリ言って古い。
そして、『社歴の長さ』とかで上から目線になる人の存在が…ダサい。
一昔前の会社員にとっては、定年まで同じ会社で生涯働いて退職金を『たんまりもらう』という事が当たり前でした。しかし、今の若い世代は「そもそも自分はどう働きたいか?」という事を、人生の早い段階で考える。終身雇用がなくなる事を前提にしている、賢い働き方です。
このような価値観の多様化が、会社に変化をもたらそうとしています。
日本の新卒が『新卒』でなくなる日
「会社で初めてインターネットに触れた世代」と、「学生時代からスマホを使っていた世代」。この2つの世代がぶつかる時に、必ず摩擦が生じます。
そもそも『考え方が違う』からです。
別の人種
そしてそれは、海外と日本の意識格差に似ています。
例えばドイツには、日本のように新卒一括採用による『一斉募集』がありません。就職活動に対する大学側のサポートもほぼ無い。
欧米諸国では、新卒もキャリア採用です。卒業と同時に自分のスキル・強みをしっかり提示できなければ、箸にも棒にもかからない。
セルフマネジメントができないと、ドイツでは社会人としてやっていけないのです。
とってもシビア
日本の学生は、大学2〜3年生あたりから就職説明会や就活対策、国家試験の準備などを始めるケースが大半らしい。そして、実務経験はあまり問われない。
しかし…。
昨今の日本の若い世代には、海外同様の『セルフマネジメントの意識』があるのです。
「ネットビジネスで家賃を払えるくらいは稼げています」
「大学の友人と会社を立ち上げた経験があります」
そのような、レベルの高い人材も増えている。
彼ら/彼女らは、いわゆる『新卒』なのに、キャリア採用と遜色ないレベルの経験を既に積んでいます。
従来の『新卒』の枠に収まらない、新しい世代の人材です。
『実務経験者』として、学生時代に既にネットビジネスや起業経験のある新卒達。将来の仕事に必要な思考・経験・柔軟性を既に身に付けており、就職先の中間管理職では扱いきれないほど高スキルな人材もいます。
大学時代からビジネスに関わることで、経営的なノウハウを既に身に付けている。まさに即戦力。
しかし…。
残念なことに、日本の職場ではそのような人材が『惜しみなく能力を発揮する』ことができない。中国の某大手企業などは優秀な学生に初任給50万円をポンッと提示しますが、日本はなかなかそれができない。
日本の多くの会社は『年功序列』だからです。
そのような日本企業に優秀な人材は行きたがらないし、海外からも人が集まらない。
「最近の若い奴はスグ辞める!」などと言うオッサン世代は、新しい世代に全く対応できていない証拠なのです。
年功序列はもう時代遅れ!
日本社会は、少子高齢社会による構造的な人手不足で、今後も『売り手市場』が続きます。
残業や休日出勤など、これまでは当たり前だった働き方が、疑問視されやすい環境が整っている。「御社ではどれくらい残業がありますか?」と、面接で直球の質問を投げる就活生もいます。
頼もしい
企業と労働者の関係性も多様化していて、これまでの古い組織体制はもはや盤石では無くなってきました。
就業形態の多様化は、我が国の雇用システムに多面的に影響を及ぼし、長期雇用や年功序列という特徴を典型的に備えている正規雇用の労働者も、減少傾向にある。さらに、労働関係の個別化も進展し、今まで企業の中で同じように処遇されてきた労働者の間でも次第に賃金格差が広がりつつある。
(厚生労働省「雇用システムと勤労者生活」)
日本の会社員は、みんなこれまで『終身雇用』に絶対的な信頼を置いていました。安定した生活が約束されたと勘違いして、身を粉にして企業に貢献する…という図式です。
そして、そのまま一生会社に面倒を見てもらおうとする。
思考停止のやつ
残業が多かろうが、休日に仕事に駆り出されようが、パワハラがあろうが…耐え忍ぶのみ。安定を求めるあまり、「会社は家族」みたいなコワイ考え方もありました。
そして、そのシステムのベースが『年功序列』でした。
初任給からスタートして、勤続年数が増えるにつれて給与も上がる賃金制度。ずーっと同じ会社にしがみついていれば、安定した給与を獲得することが出来る仕組み。
- 辞めなければ勤続ウン十年で満額の退職金がもらえる!
- 転職したら勤続年数がリセットされるからメリットがない!
- 転職はリスク! 同じ会社にいればどうせ給料は増える!
日本企業は、これまでそうやって社員をつなぎとめてきました。
そして、『終身雇用』と『年功序列』は、そのための大事なツールだったのです。
『社員が辞めない事』を前提に成り立つ、終身雇用と年功序列のシステム。
しかし…。もうシステムとして機能しないかもしれない。
「残業ゼロで成果を出したい」「転職して給料をアップさせたい」そのように考えて働く若者にとっては、何の意味も持たないからです。
若い世代は自分ファースト
日本では、終身雇用が過去の産物となりました。
某大手自動車業界の社長ですら、「終身雇用の継続は困難」と正式に発表する時代です。
大手企業のリストラも、当たり前のご時世。会社を頼りに社会人を続けることは、安定ではないのです。
そして、今の若い世代はそれをよく知っている。
「こんなに残業まみれなら、辞めます」
「有給休暇が取れないなら、辞めます」
そのようなドライな労働観を持つ若者は増えています。
クール
就職先の選択肢は多いし、どうせ終身雇用はアテにできない。当然の結果ですね。
要するに、今の若い世代は「会社が一生守ってくれるとは思っていない」のです。
企業への帰属意識もなく、求める関係性は非常にサッパリしています。
日本はこれからも少子高齢化がどんどん進むので、新入社員たちはすぐに辞めるどころか、そもそも会社によっては採用ができなくなるかもしれない。
転職者増える
この環境に加えて、前述の『新しい世代の台頭』があります。
子供の頃からネットを駆使し、早くからIT系のアルバイトをしたり、情報処理を学んだりする若者たち。目まぐるしく発展を遂げる現代社会の中で、確実にニーズを把握してきた新しい世代。
そんなスーパーマンな新卒達を、日本の会社の古い規定で採用したって、長く続くはずがない
「20数万円程度の初任給で、こんなに搾取されて…割に合わない!」
そのように感じてしまうわけですね。
日本の会社特有の古い慣行はまだまだ職場に色濃く残るし、先輩後輩から生じる人間関係の摩擦も必ず存在します。今の若い世代にとっては、それも不安要素でしかない。
会社の人事やおエライさんは、「最近の若者は…」などとボヤくよりも、価値観の多様化を真摯に受け止める必要があります。
これまでは、新卒を大企業が中心となって採用して、入社後のキャリア形成は終身雇用や年功序列といった日本的雇用慣行をベースに行われてきました。しかし近年は、グローバルなキャリアを作るために新卒で海外就職をしたり、就職してもすぐに離職する若者が増加している。日本の雇用問題は大きな変化に直面しているのです。
欧米のように完全な実力主義制を取り入れるのは無理でしょう。それでも、日本は『生産性』や『効率』の観点から、勤続年数や年齢が重視される年功序列の考えを改めるべきです。
柔軟な思考を持った今どきの新卒達にとっては、日本の職場の年功序列はダサいし古い。そして、効率が悪いだけなのです。
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