『出世をしない』という選択肢 – 管理職にならない会社員が1番幸せ?

activity-adult-adventure ワークライフバランス

ピラミッド型に構成されている企業組織。

日本の会社は年功序列なので、勤務年数を伸ばすことで係長、課長、部長…と段階的な出世をするシステムで成り立っています。

会社員として働く上では、キャリアを積んで役職の階段を上っていくことが一般的に『理想像』とされています。

経済産業省の過去の統計によると日本には大小およそ421万の企業が存在していて、本当にたくさんの会社員が毎日あくせく働いています。


しかし、その中でも『役職者の人数』は限られている。


いくらエスカレーター式に昇給・昇級できる日系企業であっても、要所に就く役職者の人数に制限があるうちは、定年までヒラ社員を続ける人もたくさん存在するわけです。

2004年当時の考察によると、管理職と呼ばれる人は全国で約340万人おり、全体に占める割合としてはおよそ10%でした。

(参照元: SSM調査における管理的職業に関する一考察,『広義の管理職』が対象, 2019.10)

平均的に見れば、日本の社会人の約90%が『ヒラ社員』なのです。

街で見かけるスーツ姿のサラリーマンやOL。そのほとんどが、『課長』や『部長』などの肩書を持たない人たち。

定年まで一度も大きな昇級を受けない人もたくさんいる。

でも、それは全然ダメじゃない。

コダモン
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ヒラでもいい?


ヒラ社員であるうちは給料は低空飛行かもしれないけれど、重要なポジションに就かないメリットはたくさんあります。

いや、むしろヒラ社員の方が幸せかもしれないということ。

あなたは考えたことがありますか?

管理職は勝ち組?


まず、「役職者は勝ち組か?」という質問に対する答え。

結論から言うと、給与だけを見れば『勝ち組』です。


残業手当がつかなくなる役職者の人たちは、係長などになりたての頃は残業代の分だけ年収が下がる傾向もありますが、その後は総じて年収アップとなります。

厚生労働省の調査結果によると役職別の平均賃金は男性では部長級の月給65万5,000円を筆頭に、課長級が52万6,000円、係長級が40万1,000円となっています。

(出典: 厚生労働省、賃金構造基本統計調査, 2019,10)

同調査では20~24歳の男性の非役職者の賃金が約21万5,000円なので、役職に就いた人の給料は『ヒラ社員』よりもかなり多い。 

仮に22歳で月給22万円のヒラ社員が年1,5%の昇給を受け続けたとしても、40歳で受け取る金額は約28万7,600円です。残業代を加味しても、係長級の平均給与の40万円におよびません。

コダモン
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お金は役職者が上


日本企業であれは、社員はみんな年功序列の恩恵でほぼ毎年ちょっとずつ昇給できる。

それでも、ボーナスや退職金なども考慮すると役職者との生涯年収の差は大きいです。

そのため、給与だけを見れば管理職が『勝ち組』です。

しかし、これはあくまでもお金にこだわった時の話。


給料以外は管理職が『勝ち組』とは限りません。


そもそも管理職とはどういった人を指すのでしょうか? 

管理職はツライよ

 

管理職とは、その制度としての意味は、昇進レースで労働者のやる気を生み出すものである。しかし、管理職のもともとの意味は人を管理・監督することを職務とする、使用者側に近い労働者である。

(参照元: 数字で見る管理職像の変化)


管理職の人たちの仕事には『管理・監督する』ということがあります。 

各課・部署の責任者として、部下たちがスムーズに仕事を行えるように監督しながら人事評価労務管理も行うこと。

カンタンに言えば、ヒラ社員だった頃にプラスして部署や部下の面倒を見るという業務が増えます。

長時間労働が蔓延している日本の職場では、 部下が定時で帰宅できるように仕事を調整するのも、本来は管理職の大事な仕事。

しかし…。残念ながら、日本の多くの職場ではコレ機能していない。

コダモン
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みーんな残業してる


日本では『残業ありき』でしか職場をまわせない企業が多く、上司には部下の仕事量をマネジメントする余裕すらない。


管理職が原因で残業が無くならないという事もあります。

働き方ヒント!

残業前提で部署をまわそうとするダメ管理職は多いです。日本の職場は『残業が当たり前』なのでスルーされがちですが、慢性的に残業が行われている職場は上司のマネジメント能力の欠如が原因。部下を定時で帰すように調整するのは、管理職の仕事です。


一定の権限を与えられる管理職は社内の重要なポストにいるため、会議や各種報告にも追われます。

自分の仕事だけでも忙しいのに、部下の管理もしなければならない。

コレがなかなか大変で、人間関係の摩擦や「仕事の向き不向き」なども考慮してマネジメントする必要があります。

さらに、最近の若い世代には柔軟な思考を持つ人も多いので、部下の中には『ダメ上司』に真っ向から反対する人もいます。

「給料分の仕事しかしたくない!

「手当が出ないなら残業したくない!


そうやって、労働者の当然の権利を真っ向から主張する若い世代は増えています。

こうなると、これまで『部下の残業ありき』で仕事をまわしていたダメ上司は大変です。

担当部署のアウトプットの責任を取らされる管理職は、部下が帰宅した後に仕事を肩代わりする事もある。

コダモン
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仕事たんまり


ヒラ社員は、基本的に上から降ってくる仕事をこなしていればそれでいい。

しかし、これが管理職となると一変し、事業やプロジェクトの責任を問われることとなり大きなプレッシャーが追加されます。

毎日仕事に追われ、部署の面倒も見ながら上の期待にも応えなければいけない。働き方に対して「古い世代の上層部」と「新しい世代の部下たち」の間で板挟みになり、結局一番仕事量が多い。

そのような管理職は『ツライ』の一言です。

管理職が勝ち組であるかどうかは、仕事のストレスを考えると一概には言えないのです。

ワークライフバランスが無い管理職

パソコンに向かって議論する2人の人

お金以外にも、「地位や名誉が欲しい!」「世間体を良くしたい!」などと考えて管理職を目指す人はいるでしょう。

または、「裁量のある仕事を受けて成長したい!」「企業の舵取りを担いたい!」そのように考えて、自分のキャリアが生きがいだと感じる人もいる。出世競争の中で『勝者』となることに悦びを感じる人もいます。

出世欲が強いことは決して悪い事ではなく、むしろそういった人材のおかげで企業組織は成り立っています。

仕事にストイックで部下に対する要求も高い上司は、たとえ職場では嫌われ者でも、企業にとっては利益を生み出すために必要不可欠な人材です。

しかし…。

そんな管理職たちの生活は『ライフ』よりも『ワーク』が先行しがち。自分のポジションを失わないために必死でがむしゃらに仕事をする人もいます。

「定時以降になってから自分の仕事にとりかかる」

「休日にも仕事をしてメールを送る」

日系の大手企業に就職していた当時、オーバーワークの管理職はたくさんいました。

プライベートを犠牲にして働く上司が何人もいた。

働き方ヒント!

当時の上司で課長職だった人は「会社で徹夜して、始発で帰ってシャワーだけ浴びて寝ずに出社」という働き方をした事がありました。突発的な状況ではなく、平時で『自発的に』です。そんなヤバい働き方をネタとして笑い話にする – 日本の職場の闇です。

明らかにストレスまみれの管理職。


どんなに高額な役職手当をもらっても割に合わない


深夜まで働く管理職には家族と過ごす時間もない。そこには『ライフ』がないのです。

コダモン
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そんなに仕事すき?


彼らは、プライベートの時間を犠牲にして仕事に生きていました。

特に中間管理職は、上への報告や顧客対応にも追われながら、長時間労働と仕事のプレッシャーで心身をすり減らしています。

そしてそれは、ワークライフバランスがない働き方なのです。

たしかに、管理職試験を受けて役職者になれば給料は上がる。

けれど…そこからのキャリアはストレスと隣り合わせ。

『責任が重くなる』『仕事が増える』『残業が増える』という、避けられない現実を目の前にして出世を拒否する人もいるでしょう。

コダモン
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出世イヤかも


ただでさえ仕事に興味がなく、キャリアにまったく無関心な人もいる。

同時に、「責任がプレッシャーになるのはイヤ!」「仕事より趣味を優先させたい!」と言う、今どきの柔軟な思考を持つ人もいます。

ストレスまみれの上司を身近で見て、「あんな風に働きたくない…」と思っている人もいるでしょう。

ワークライフバランスを守るために『出世をしない』という選択肢は、確実に存在するのです。

ドイツの『ヒラ社員』


欧米諸国の企業組織には、日系企業ほど多くの中間管理職がいません。

働き方ヒント!

ドイツの職場は実力主義なので、有能な人材だけが管理職のポジションへプロモーションされます。欧米には年功序列のシステムも無く、昇給・昇級の交渉に臨むだけの成果が出せる、高スキルな人材だけが上を目指せるのです。


そのため、海外企業で「マネージャー」「シニアマネージャー」「ダイレクター」などの肩書きを持つためには、日系企業以上に厳しい競争を勝ち抜く必要があります。

海外では役職者になることは『狭き門』なのです。

そのため、どのような業界や職種にも、定年間際になっても裁量の大きくない仕事をコツコツこなしている人がたくさんいます。


ドイツの職場にはヒラ社員がたくさんいるのです。


しかし、ドイツのヒラ社員には「出世競争に負けた…」というネガティブな様子はまったくない。これまでの社会人生活で培った経験とノウハウで、最短で成果を出すことに特化して働いています。

ドイツでは平社員が年下上司のもとで働くのも当たり前。MBAなど優秀な肩書で入社してきた20代後半の若い転職者が、入社十何年のベテランを部下に持つ事もあります。


ドイツでは転職が頻繁に行われるため、社員の入れ替えなどは日常茶飯事です。年下上司のもとで働くことも、ヒラ社員にとってはよくあること。そのため、日本のように『世間体を気にする』という風潮もありません。

そして何よりも、ドイツのヒラ社員はとても幸せそうに仕事をしています。

ドイツで実際に働いてみて、日本との違いにビックリしました。

コダモン
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みんなイキイキ


社内のことを知り尽くした40代~50代のベテラン勢は、朝早くに出勤して仕事を適宜に終わらせると、夕方4時にはいそいそと帰宅します。

毎日早く家に帰って、庭いじりや余暇のスポーツ、友人と飲みに行くなど、みんな仕事以外にやりたい事がいくらでもあるのです。

ドイツのヒラ社員は、重要な会議や顧客対応など『プレッシャーの高い仕事』は役職者に任せて、仕事が終わったらさっさとオフィスを後にします。

プライベートを常に優先させながら、効率良く働くドイツのオジサン・オバサン社員。みんなとても幸せそうなのです。

働き方ヒント!

ドイツの平社員の中には、毎日午後4時に仕事を切り上げる人もいれば、1年間に2回も3回も長期休暇へ出かける人もいます。『ワーク』を上手にコントロールしながら『ライフ』を充実させる事に価値を見出しているのです。



管理職ほど仕事のプレッシャーとストレスがないことを逆手にとって、仕事以外の時間に全力を注ぐ。これがドイツのヒラ社員の姿です。 

結果のみが求められる世界で、仕事でコケれば自分が真っ先に槍玉に上げられる。成果主義のドイツ企業では、管理職レベルの社員のプレッシャーはとても大きいです。

日本以上に高給取りですが、それなりの重圧と戦っています。

残業がほぼ無いドイツにおいては、余暇を気がねなく確保できるヒラ社員が『勝ち組』とも言えるのです。


管理職にならない会社員が1番幸せ?

おだやかな青いビーチ

話を日本に戻します。

日系企業では、ワークライフバランスを守るために『出世をしない方が幸せ』なのでしょうか?

その答えは、2パターンにわかれます。

「管理職にならない方が幸せ?」に対する答えがYES!の人:

・仕事とキャリアに『自分の幸せ』を見出せない人
・趣味や副業、家族や友人のために『余暇の時間』をあてたい人
・仕事は『お金を稼ぐため』と割り切ってストレスを減らしたい人


「管理職にならない方が幸せ
?」に対する答えがNO!の人:

・会社に対する忠誠心があり自分の仕事に誇りを持つ人
・『年収1,000万円』など高収入を得る事にこだわる人
・出世をしない事で変わっていく『世間の目』に耐えられない人

 

管理職にならない方が幸せかどうかは、最終的には個人の価値観によって変わります。


「年下に指示されるなんて無理! 絶対に耐えられない!!


そう言って、プライドを維持するためにがむしゃらにキャリアを積む人もいれば…。


「このままヒラを続けて年収500万円くらいキープできればいいや…


そのように考えて、世間体も何も気にせずのんびりとオフィス勤務を続ける人もいる。

働く人の個性や価値観の違いにより、色々な会社員の姿があります。

それでも、管理職は『勝ち組ではない』とハッキリ言える理由が1つあります。

コダモン
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大事なこと言うよ


そのキーワードは『ワークライフバランス』

日本とドイツで会社員を経験したハーフだから、言えることです。

 

日本の企業では、ワークライフバランスの維持がとても難しいです。

働き方ヒント!

成果主義ではなく年功序列で組織されている日本企業は、『社員が辞めないこと』を前提に運営されています。そしてそれは、上司による人事評価や労務管理にも反映される。そのため、長時間労働や理不尽な事に無言で耐え続ける社員が多いのです。


職場の人間関係がどんなに嫌でも、どんなに残業が多くても、10年も20年も耐え続けること。

大きなミスを犯さないように気を配りながら、だんだんと出世の恩恵に授かるのが日本の管理職。

しかし、そのキャリアは必ずストレスと隣り合わせです。

昨今の激しいグローバル戦線を勝ち抜くために、多くの日系企業は必死です。管理職に求められる職務とスキルの幅もどんどん広くなっています。

少子高齢化で人手不足が続く今後の日本では、管理職の裁量も大きくなります。そして、その変化を受け入れる技量と心の余裕が求められる。

役職者になるには、『企業に貢献する覚悟』が必要だと言えます。

しかし、ヒラ社員であればそれらとは無縁です。

働き方ヒント!

日本企業では中間管理職まで昇りつめても役職定年となり、いつか『お荷物』と化します。そんなキャリアよりもストレスの少ないヒラ社員で『勝ち組』となるために、周りとの差別化となるスキルを身につける事。市場ニーズに対して持続性のある人材を目指しましょう。


管理職に就くという事は、その責任から来るプレッシャーと戦う事。

身を粉にして同じ会社に10年20年と貢献して、たくさん残業して、職場の人間関係を耐えて…ようやく管理職になれる日本。

仕事のストレスで体を壊しても、会社は知らん顔。頑張りへの対価は給料だけ。

コダモン
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それでも管理職やる?


ヒラ社員を続けていても生活する分の給料はちゃんともらえるし、家族でたまの旅行にも行ける。住宅ローンだってゲットできるでしょう。

お金で贅沢はできないかもしれないけれど、家族と過ごす時間や趣味の時間がしっかり持てる。仕事のストレスも少ない。

『ライフ』を充実させることができる。

コダモン
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まさに人生の勝ち組


残業と仕事のプレッシャーで家族と過ごす時間もロクに作れない、ストレスまみれの管理職。

その道を目指さずに、ヒラ社員を続けて「プライベートをとことん充実させる」というのは、決しておかしな話ではない。

管理職にならないという選択肢は、心身を消耗しないための賢い選択とも言えるのです。

40代や50代で管理職にならないと、同期との給料の差は大きく開くでしょう。

それでも、『ワーク』だけが先行して『ライフ』の無い人生を送るより、万年ヒラ社員の方が幸せかもしれません。

いや…むしろ、なりたくもない管理職なったり、無理して出世して仕事一辺倒の人生を送るくらいならば…。

『出世をしない』という選択肢は、正しいのです。


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